イスラム過激派テロ 人気高い博物館や美術館は危険と専門家

 

  武装した男たちが銃を乱射し、日本人3人を含む外国人観光客など21人が殺害された3月のチュニジアの美術館におけるテロ事件。治安部隊に射殺された2人の男は隣国リビアのイスラム過激派組織で戦闘訓練を受けていたとされる。チュニジアのカイドセブシ大統領がイスラム過激派アンサール・シャリアの犯行との見方を示す一方、ISとの関連を指摘する声もある。

 『イスラム国の正体』(ベスト新書)著者で軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏が多発する「テロの連鎖」を解説する。

 「ISなど過激派テロ組織は社会に不満を持つイスラムの若者を欧州各地でリクルートし、イラクやシリア、リビアで銃器を用いた戦闘訓練を行い、母国に帰国させる。彼らが友人や知人など賛同者を集めて独自に立案したテロを決行した後、テロ組織が仰々しい犯行声明を出し、それに感化された各地のシンパが、“俺もやってやる”と触発されてテロが続いていく」

  観光客までが狙われたいま、次の標的となるのはどこか。危機管理に詳しい大泉光一・青森中央学院大学教授が警告する。

 「ISなどの最大の目的は、テロ行為で組織の存在感を知らしめること。彼らはそのために最適な場所を選ぶ。多くの外国人客が集う観光地で大規模なテロを起こせば、テロ発生国だけでなく、犠牲者の母国も含めて、世界中にインパクトを与えられる。今回のように人気の高い博物館、美術館などはとくに危険だ」

  日本人の好む世界遺産もターゲットとなる。

 「エジプトのルクソールでは過去にテロが発生して日本人観光客が犠牲になった。ギザの大ピラミッドなどの世界遺産は警備が強化されたとはいえ、危険度は依然として高い。また、モロッコのマラケシュやカサブランカなども欧州の観光客が多く、格好の標的だ」(黒井氏)

  チュニジアのテロ発生時には、警備担当の警察官が持ち場を離れ、カフェなどで過ごしたことがわかっている。当地の警備態勢を過信できない。

 ※SAPIO2015年5月号