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教育・キャリア

スカイマーク 全便3900円「39サンキューキャンペーン」を実施

 スカイマーク 全便3900円「39サンキューキャンペーン」を実施

 

 スカイマーク機

 スカイマークは、4月29日(水)搭乗分の全便を対象に座席数限定で、片道3900円とする「39サンキューキャンペーン」を実施すると発表した。販売期間は、3月30日(月)15時00分から4月1日(水)23時59分まで。予約変更、払戻不可。
 
 同社は、1月28日に民事再生法適用を申請、受理された。再生に向けての第一歩を踏み出した翌29日から3か月となる4月29日搭乗分に、お客様に感謝(サンキュー)を伝えるキャンペーンとして、割引運賃「SKYセール」を3900円で設定する。
 
 詳しくは、スカイマークホームページへ。
 http://www.skymark.co.jp/ja/

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人間の仕事がひとつなくなります メガバンクがロボットを導入

 人間の仕事がひとつなくなります メガバンクがロボットを導入

 

  銀行でロボット(人工知能)を活用する動きが活発化しています。ロボットの普及は、仕事のあり方を根本的に変えるといわれていますが、銀行という身近なサービスで導入が進むことで、普及に弾みがつくかもしれません。

 [写真]人工知能ワトソンを発表するIBM(2014年9月、ロイター/アフロ)

  三井住友銀行は、年内にも、米IBMが開発した人工知能「ワトソン」をコールセンター部門に本格的に導入します。昨年、同行は「ワトソン」に関するテストを開始、さまざまな状況において適切な回答ができるのかを検証してきました。このほど十分に実用に耐えると判断し、コールセンターへの導入が決定したわけです。
 
  みずほ銀行や三菱東京UFJ銀行もワトソンの導入を進めており、近い将来、3メガバンクのすべてにおいて人工知能によるサービスが始まることになります。
 
  人工知能は、高度な学習機能を備えており、顧客の曖昧な質問に対しても、熟練した行員のように適切な回答を導き出すことができます。コールセンターには「ATMの手数料はいくらですか」「ネットバンキングは私でも利用できますか」といった質問が数多く寄せられます。ATMの手数料といっても、自行のカードと他行のカードの場合は異なりますし、時間帯による違いもあります。ネットバンキングについても「ネットは利用できますか」と質問する人もいれば、「オンラインサービスってできるの?」と聞く人もいるはずです。慣れていないオペレーターは、「ネットで利用できますか?」という質問に対して「当社の『インターネット○×バンキング』に関するご質問でしょうか?」といった回答をしてしまいます。利用者はそもそも、そのサービスの名前を知らないのでわざわざ電話しているわけですが、経験が浅かったり、相手の気持ちを理解する能力に乏しい人の場合、このように利用者の立場を無視した回答をしてしまうわけです。
 
  一方、人工知能であれば、このあたりの微妙な部分についても自律的に学習していきますから、誰がオペレーターになってもスムーズな案内ができるようになります。
 
  正確性を要求される銀行の業務で人工知能を導入できるということは、あらゆる分野に応用が可能ということを意味しています。会社の情報システムに人工知能が入った場合、営業マンのメールや電話を人工知能がチェックし「あなたの言い方では顧客の気分を害する可能性があります」などと、人口知能から注意されることになるかもしれません。
 
  米国ではすでにロボット記者やロボット医師、ロボット薬剤師が登場しているほか、現在、存在している仕事の約半数がロボットに置き換えられるとの予測も出ています。銀行の窓口対応がよくなったと喜んでいる間に、自分の仕事がなくなっているという事態もあり得るわけです。 
 
 (The Capital Tribune Japan)

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重要なのは非日常感! エクストリーム出社を楽しむコツ

 重要なのは非日常感! エクストリーム出社を楽しむコツ

 

    

 先に公開されている「エクストリーム出社・体験編」で、早朝ボウリングにチャレンジした筆者。充足感に満たされた一方で、出社したその日は午後から集中力が途切れてしまうという事態が起きました。そもそも、エクストリーム出社初心者がボウリングに挑戦したことが間違いだったのでしょうか? 日本エクストリーム出社協会代表の天谷窓大さん、どう思いますか?

 「確かに、普段から運動している人でないといきなりボウリングは疲れますよね。そういう意味では、ボウリングは中級レベルのアクティビティです。もし疲れを引きずりたくないのであれば、『築地市場で朝ごはん』など運動しない初級レベルから始めるといいでしょう。……とはいえ、エクストリーム出社は体や精神を鍛えるものではないので、段階を踏んで慣らす必要はあまりありません。いかに”非日常”を味わえるかのほうが重要ですよ」

 実際、エクストリーム出社を始めた人の声を聞くと、「平凡な日常から脱したかった」という内容が多いとか。早朝にこなすアクティビティは、いわば日常のスパイス。もちろん仕事に影響が出過ぎないよう注意を払う必要はありますが、「疲れるだろうけど楽しそう!」という感覚を大切にして、アクティビティを選びましょう。つまり、疲れは出てしまったけど飛び跳ねるほど楽しめた今回のボウリングは、エクストリーム出社としては正解と言えるのかも!

 では、もう一つの反省点「通勤ラッシュに巻き込まれた」についてはどうなのでしょうか。せっかく早起きするなら、ラッシュは避けたいところですが……?

 「それなら、ラッシュとは逆方向の電車に乗れる場所や、職場まで徒歩で行ける場所でアクティビティをこなすといった工夫をしてみましょう。また、あえて遠くまで出てしまって、ホームライナーで出勤するという手もありますよ。ラッシュの時間でも必ず座れますし、何なら着くまでの時間一眠りしたり、駅弁を食べたりできます」

 その場合、鎌倉の海や箱根の温泉宿など観光地に行くのが◎。週末は激混みのエリアですが、平日の朝なら空いていて独り占め気分を味わえるそうです。こういったぜいたくなアクティビティも、たまに試してみたいところですね。

 「ちなみに、エクストリーム出社を実践する頻度は多くても週一くらいが理想ですよ。頻繁にやり過ぎると疲れちゃいますからね(笑)。また、地名と『早朝』というワードでアンド検索すると、意外なアクティビティが見つかることも。これで自分なりのプランを立ててみるのも楽しいです」

 一日が始まる前から一日を過ごした気分になれるエクストリーム出社。皆さんなら、まずどこで何をする?

 天谷窓大
 自身もさまざまなアクティビティを実践しているエクストリーム出社提唱者。同協会編集の『サラリーマンは早朝旅行をしよう! 平日朝からとことん遊ぶ「エクストリーム出社」』が発売中。

 (松本まゆげ+ノオト)

 ※この記事はシゴトサプリより提供を受けています

窓ぎわブルース (8) サイン

 窓ぎわブルース (8) サイン

 

 とある会社の総務部(通称:窓ぎわ部)を舞台に繰り広げられる”ちょいゆる”系オフィスストーリー。(毎週月曜更新予定)

 
 オオノマサフミ
 1981年7月30日生まれ。東京都豊島区出身、板橋区在住のイラストレーター。2児の父。「コミカル」で「ほどよくゆるい」イラストを武器に雑誌・書籍・WEB・広告などで活動中。WEB「Good Mornin’ Studio」ブログ「じゃぽん。」

<北陸新幹線の観光効果>老舗長野の“小さな開国” 強敵は金沢?

 <北陸新幹線の観光効果>老舗長野の“小さな開国” 強敵は金沢?

 

  北陸新幹線が14日、長野以北の金沢まで延伸開業しましたが、沿線の延伸振興策で微妙な立ち位置にいる長野県の動向が注目されます。これまで「長野新幹線」(東京~長野間)で一身に新幹線のメリットを享受してきた長野県が、今後は北陸各県、新潟県などと競争関係に入るからです。初の新幹線を迎える北陸各県などの強い意気込みに伍して、先行してきた長野県が魅力づくりにどう取り組むかが問われています。

「攻め」の金沢、富山、上越

 [写真]長野駅から金沢に向かう「かがやき505号」

  金沢、富山、上越など「初の新幹線」を迎える地域が攻めの戦略に立つ一方、長野県はJR長野駅を終点として18年間運行してきた長野新幹線の利点に立ちながら、ライバルから追われる立場にもなります。長野冬季五輪(1998年)の前年1997年に北陸新幹線の一部区間として開業した長野新幹線に、当時の沿線県民は沸きました。今回の金沢延伸でも、7年に一度とされる善光寺(長野市)のご開帳がちょうど4月5日から始まるため、地元にとっては二重のビッグイベント。しかし、その盛り上がりが長期的な沿線振興につながるとは限りません。
 
  長野県にとって気になる北陸、新潟の延伸振興策や波及効果はどれくらいのものなのでしょうか。現在、東京~金沢間は上越新幹線・越後湯沢駅から在来特急「はくたか」を利用して4時間近くかかります。JR西日本によると延伸後は最速新幹線による金沢―東京間の時間短縮は1時間半前後、金沢~長野間は同2時間前後、富山~東京間は同1時間前後になります。
 
  この時短インパクトは大きく、日本銀行金沢支店の1月のリポート「北陸の中小企業の現状と活力ある企業の特徴」では、北陸新幹線の金沢開業を控えて広告需要が増加しているとの声も聞かれると指摘。日本政策投資銀行富山事務所が2013年にまとめた「北陸新幹線開業による富山県内への経済波及効果」によると、延伸で富山県への首都圏からの入り込み数は22%以上の増加が見込まれ、その経済効果は観光で年41億円、ビジネスで年16億円と推定。その波及効果は年間88億円と試算しています。
 
  新潟県上越市がまとめた金沢延伸効果は、東京まで17分、長野まで71分、富山まで39分、金沢まで57分の時間短縮。これに伴い、1時間以内に上越市に到達できる地域は現在の6・8倍にまで広がり、その圏域内の人口は350万人に。さらに2時間以内で到達できる圏域は現在の3・7倍、3500万人に上るとしています。そして、上越市は北信越エリアのほぼ中央に位置し、北陸道と上信越道の接続地点にもなっている上、直江津港の存在も含め延伸により「アジア地域との交流の拠点になる可能性を有している」とうたい上げます。
 
  さらに、北陸新幹線の上越妙高駅を中心とする上越、妙高、柏崎、十日町、佐渡の5つの市が連携して新幹線開業プロジェクトを盛り上げる「ようこそ。越五の国へ。」キャンペーンを2013年からスタート。「上杉謙信公以来の恵みあふれる国」と、地域ぐるみで誘客に熱が入ります。

思い描く「沿線周回モデル」

 [図表]北陸新幹線の路線図

  迎え撃つ長野県の戦略の一つは、県内主要駅のJR長野駅が北陸新幹線のほぼ中間地点に位置し、地理的にも北信越の中央にあることを生かした「沿線周回モデル」です。
 
  信州長野県観光協会は、現在東京から長野経由で金沢に向かう動きはゼロに等しいが、延伸により現在、越後湯沢経由の東京~金沢間の乗客は、ほぼ全部が長野を経由すると見ます。その県内通過の輸送量は現在の1.7倍に急増し、東京、長野、金沢、大阪、名古屋を円状にめぐる周回軌道内に延伸効果が生まれると見込みます。そして、その県内域に観光客を通過・滞在させるため「立山・黒部アルペンルート」「上高地」「軽井沢」の3拠点を戦略的な観光基点と位置づけ、沿線の軽井沢、佐久平、上田、長野、飯山各駅の観光ハブ化(拠点化)進めるとしています。
 
  県内各地域の取り組みの一つとして、長野市の長野商工会議所は金沢延伸と善光寺のご開帳に向け、中心市街地にとどまらず戸隠、松代などへの広域的な回遊が可能になるよう市に要望。長野市も長野駅の駅前広場整備や、駅構内にある市の観光情報センターのリニューアルなどを進めています。昨年2月には「関係職員らがスマホやネット関連のツールを活用して誘客情報を発信しよう」と、長野県、長野商議所主催で長野市で「長野地域 情報発信力向上フォーラム」を開催。専門家を招いて善光寺ご開帳、金沢延伸に向け市町村や商議所などの職員の情報発信力の強化をいかに進めるかをテーマに関係職員ら100人近くが参加しました。
 
  一方、延伸で新幹線飯山駅が設けられた飯山市では、市や商議所による飯山駅開業イベント実行委員会が開業200日前イベントなどで盛り上げを図ってきました。新幹線飯山駅は全長300メートル以上の巨大駅舎。地域のシンボルとして今後も市民の期待を集めそうです。2010年に策定した「回遊性のあるまちづくり(まちなか観光)第二次アクションプラン」では、新幹線飯山駅開業を軸に、飯山駅と周辺の観光資源を結ぶ環境の整備、まちなか散策のためのボランティアの育成、ガイドブックの作成、商品開発など多くの振興策を盛り込んできました。

「ストロー効果」への懸念

 [写真]県内外の多数の店を集めたJR長野駅の駅ビル「MIDORI長野」

  長野県では新幹線がその先の新潟、北陸につながることで「新たに金沢、富山などからの入り込みが期待できる」との見方がある半面、逆に他地域に吸引されるのではないかとの懸念も根強いのです。金沢延伸に向け3月7日にオープンしたJR長野駅の駅ビル「MIDORI長野」。上田市から家族連れで訪れた団体職員の男性(49)は「延伸で金沢、富山に行けるのはうれしい」としながらも「長野県内が通過点にならないか心配です」と話します。
 
  その兆候は18年前の長野新幹線開業時にも「ストロー効果」として指摘されました。当時は東京~長野間が在来線特急でも3時間近くかかっていたため日帰り出張は難しかったのですが、新幹線開通で日帰りエリアになったため企業の長野営業所などが次々に廃止、縮小され、長野の経済に影響を与えました。それまで地元での買い物が多かった女性なども「銀座まで日帰りで」ということが珍しくなくなったのです。

 [写真]長野県のアンテナショップ「銀座NAGANO」で懸命の長野PR

  そうなると、それぞれの土地の持つ魅力が決め手になります。これまで旧・長野新幹線の終着駅を持ち、新幹線の利点をいわば独占していた形の長野県や長野市にとって金沢延伸は“小さな開国”。長野市民の間では「金沢の城下町文化、富山の魚や自然、長野の善光寺やリンゴ、そば」を挙げて、どこが吸引力を持つかが話題になります。特に金沢は強敵との見方もあります。
 
  その前哨戦として、沿線の石川、富山、長野、新潟など各県は、東京に設けたアンテナショップで特産品のPRや販売に力を入れています。有楽町駅から7分の好位置に構えた長野県のアンテナショップ「銀座NAGANO」(中央区銀座5-6-5)には、信州そばや漬物、日本酒など多くの物産が並びます。観光情報の提供や、長野県への移住、就職の相談にも応じるなど、PR作戦は多彩です。

「その先の地域」への関心

  しかし、JTB総合研究所によると新幹線開業への期待は沿線にとどまりません。鹿児島新幹線(2011年開業)の場合、新幹線鹿児島中央駅から在来線特急で1時間近くかかる薩摩半島南端の指宿市で同年の宿泊客が前年比13%以上増え、日帰りを含む全体では同2%近い増加になり開業の効果があったといいます。心理的な距離が近くなれば、新幹線が着いたその先の地域にも関心が集まり、「北陸新幹線の場合は金沢のさらに先の能登半島や温泉、白川郷、高山などの周遊の機会の増加が期待できる」といいます。それは長野県でも同じことで、周回軌道方式などをどう実現するかが課題になります。
 
  株式会社ブランド総合研究所(本社・東京都港区)による都道府県の魅力度ランキング(2014年)によると、トップの北海道から京都府、沖縄県と続き、長野県は前年と同じ9位でしたが、石川県は11位(前年14位)、富山県23位(同21位)、新潟県35位(同30位)。「信州」ブランドの強みをうかがわせます。新幹線先取り県として北陸、新潟に追われる立場で老舗の実力を示せるかどうかが、今後の長野県を占うことになります。
 
 (高越良一/ライター)

 ■ことば:「北陸新幹線」 東海道新幹線の需要増大、老朽化への対応や災害時に関東、関西を結ぶ国家戦略的な迂(う)回輸送幹線としても期待される新幹線。計画では東京、長野、上越、富山、金沢、福井などを経て大阪に至る延長約700キロメートル。長野までは平成9(1997)年10月開業。平成27(2015)年3月14日、金沢まで延伸開業。東京~金沢間は最速2時間28分。長野県内は長野駅だけ停車する「かがやき」が1日10往復、停車タイプの「はくたか」が14往復、長野~金沢間の停車タイプ「はくたか」は1往復、東京~長野間の「あさま」が16往復、富山~金沢間の「つるぎ」は18往復運行する。長野駅には現在の27本を大幅に上回る41本が停車する

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日本語教師は子育ての経験も活かせるシゴト

 日本語教師は子育ての経験も活かせるシゴト

 

 結婚や出産を機に家庭に入った女性が、再び社会復帰しやすい職業として近年注目を集めているのが“日本語教師”。日本語を学ぶ外国人に日本語を教える仕事だが、母国語とはいいながらも、専門知識や素養が求められる職業だ。現在のところ、日本語教師になるための明確な資格はないので、ボランティアで教える場合はいつでも始められる。しかし、日本語学校などで職業として教鞭を執る場合には、日本語教育能力検定試験の合格者であることや、日本語教師養成講座で420時間コース修了者、大学や大学院の日本語教育を専攻していることなどが求められる。

 東京中央日本語学院(TCJ)で日本語教師を務める増渕直子さん

 一定の専門知識が必要で決して誰にでもなれるものではないが、母国語ということもあり、他の外国語よりも敷居が低く、働き方も選択できるため、いったん労働現場からリタイアした主婦が挑戦しやすく人気がある。そこで今回は、実際に出産・育児期を経て日本語教師として社会復帰した女性に、日本語教師の魅力を訊ねた。

日本語教師になる気はなかった!?

 お話を伺った女性は、現在、東京中央日本語学院(TCJ)で日本語教師を務める増渕直子さん。2013年4月に長男が高校生になり寮生活を始めたことから、自由な時間が増え、TCJで1年間の日本語教師養成講座に通い始めた。そして、コース修了後の2014年4月から日本語教師として非常勤講師として勤務している。

 養成講座修了後からすぐに日本語教師としての就職口が決まるなど、とんとん拍子に見える増渕さんだが、実は外国人にボランティアで日本語を教えていた期間が長い。

 「今から10年以上前なのですが、2003年に長男が小学生になったのを機に、NPO法人JCAで日本語を勉強する外国人のお手伝いをボランティアで始めました。たまたま地元で日本語を教えるボランティアのための無料講座の募集があるのを見掛けて。多数の応募があったようですが、ラッキーなことに受講者の枠が得られたんです。そして、そこで出会った先生に近所の図書館での週1回のボランティアに誘われて。長男が中学を卒業するまで、そこでずっと日本語を教えるボランティアを続けていました」

 とはいえ、当時の増渕さんは日本語教師として本格的に社会復帰をするということはあまり頭にはなかったという。「長男が高校に入学して寮生活になったのを機に、TCJの日本語教師養成講座に通い始めましたが、再就職というよりも日本語を教えるための勉強をもう一度体系的にしたかったというのが動機です。だから、またボランティアに戻るくらいのつもりだったんです」と増渕さん。実際には、養成講座の修了時に、TCJで偶然求人があったことや、同期の友人に誘われたこともあり、軽い気持ちで応募したところ、採用が決まったとのことだ。そんなまるで流れに身を任せるように現在のポジションに辿り着いた増渕さんだが、そもそも日本語教師に関心を持ったのは意外なキッカケだという。

英語が好きだった

 「一番最初はどちらかと言うと英語が好きだったので、英語のほうを一生懸命勉強していたんです。大学時代にニュージーランドへ旅行した際にとても日本語が上手な現地の人に出会いました。そして『どうしてそんなに日本語が上手なの?』と訊ねると、ニュージーランドにある日本語の専門学校で勉強をしていると。その時に日本語教師に興味を持って、帰国後に早速日本語を教えるための養成コースを2カ月間受講しました。ただ、当時の日本語教師は待遇面などで安定した職業とはいえず、卒業後は外資系メーカーに就職して秘書をしていました」

 そんな増渕さんだが、大卒で就職した企業はわずか1年間で退職する。「卒業後に就職した会社では、秘書の見習いで、私にとってはとにかくつまらなかったんです。外資系企業なので、もっと英語を使って仕事ができるのかなと思っていたんですが、事務的な作業が多く、私には向いていなかったんですね。それでもう少し英語力をつけたいと思い、1年で辞めて、半年間、イギリスで語学学校に通いました」

 そして、その後は、以前実家にホームステイしていたスイス人の友人を訪ねて1カ月ほど一人旅をした後に帰国。帰国後は英会話学校に就職し、受付秘書業務に従事し、約2年後に結婚退職。後にご主人の転勤でアメリカに転居することになり、ここでまた日本語教師という現在の経歴に結びつく転機が訪れる。「主人の仕事の関係で、アメリカのメリーランド州で過ごしたのは1年間だけだったのですが、せっかくなので、大学の夜間コースでアメリカの歴史を学んだり、ボランティアによる困っている学生対象の英語コースを受講したりしていました。先生たちが自宅に招待してくれたりもするので、アメリカ人の一般生活を知る機会にもなりました」と増渕さんは振り返る。さらにその後は日本で長女を出産した後、3年後に転勤で今度は香港へ。約2年後に長男を出産した後、翌年に日本に帰国し、しばらくは育児中心の生活を過ごしていたそうだ。

日本語を教えることは”恩返し”

 このように学生時代から英語や外国に興味があり、さらに留学やご主人の転勤で海外と日本を行き来する生活が続いた増渕さんだが、最初、ボランティアというかたちで日本語を教える手伝いを始めたのには、次のような想いがある。

 「自分が海外にいたときに、ボランティアの方々に英語を教えていただきました。他にも、海外でいろいろ親切にしていただいていたので、その恩返しをしたい気持ちが強いんですよ。日本語教師養成講座に通っていた仲間の中にも、やはり海外で外国人にすごく助けてもらったから恩返しをしたいっていう人が多くいましたね。なので、日本で困っている外国人の方々をサポートできたらなぁという思いが自然とありました」

 と、日本語教師への道のりを振り返る増渕さんだが、専業主婦として育児に専念した経験が日本語教師として活かされることも多いと語る。

 「日本語教師に限らず、やはり子育て経験は”人に何かを教えること”に活かされると思うんですよね。お料理教室でも何でもいいのですが、何かを教えるっていうのは特に女性は向いているのかもしれない。子育てによって忍耐もつきますし、励ましたりとかもね。反対に、学生とのつきあいから子どもとの関係もちょっと勉強になることもあります。娘と同じぐらいの年齢の学生もいますし、今の若い人たちがどんなふうに考えているのかというのも理解できたり。若い生徒と接触することで、若さを保つこともできます(笑)」

主婦に向いている職業

 また、日本語教師は主婦にとっては家庭と両立しやすい職業とのこと。「企業に勤めて、毎日働いて、朝から晩までの仕事というのは私にはちょっと無理でした。もちろん、出産前に仕事をバリバリやっていた方だったら、子育て期間中2年ぐらい休んでもまた復帰が可能だと思うんですけど、私みたいに緩やかなことをして、子育てをして、また社会復帰という場合には企業勤めでというのは難しいんです。その点、日本語教師は、主婦業をしっかりやりながらできる責任ある仕事です。それでいて自己実現にもなります。やはり、誰かのお母さん、奥さんという役割りだけではなんとなくさびしいし、もったいないですよ。一度家庭に入った方でも実践を重視している日本語教師養成コースを修了すれば先生になれます。私でもできたんだから大丈夫です。あとは本当に好きかどうかですね」と増渕さん。まさに“好きこそものの上手なれ”を地で行っているような増渕さんだが、日本語教師1年生としての実際の生活について次のように話してくれた。

 「日本語教師って学校だけでなく家での作業が結構あるんですよ。主に授業の準備です。慣れてくれば楽になるんだと思いますが、まだ1年目の私には、勉強しないといけない事もたくさんあるので大変です。とはいえ、ちょこちょこと空いた日常の隙間時間にもできるのでそんなに負担にはなりません。私なんかは犬の散歩をしながら『明日の授業では、どんな文章を使おうかな~……』とか考えたり」

日本語教師の魅力

 そんな日本語教師1年生として奮闘中の増渕さんだが、日本語教師の魅力について「やはり学生が理解してくれキラキラと目を輝かせるときが一番うれしいです」と明かす。さらに、「あとはちょっと大きなことを言っちゃうと、例えば日本と外国との関係が悪くなったときでも、その国の生徒たちに、微力ながらも日本の良さを伝えることで、日本に対して良い印象を持ってくれれば、そういうのが積み重なって国同士の関係もよくなるんじゃないかなと思うんですよ。年とともにだんだんと自分が生きているからには何か世の中の役に立たなければという気持ちが強くなるものなので、それを実現できるというのも魅力に感じます。それに日本語というのは学んでみるとすごく奥が深くて母国語とはいえ難しい。日本人でも知らないことがたくさんあって興味深いです」と話した。

 増渕さんは日本語教師という現在のお仕事をまずはご主人が定年退職を迎えるまでのあと10年ぐらいは続けたいとのこと。「10年間、何かを継続的にやると達成感があると思います。とりあえず、節目として10年と考えていますが、日本語教師に定年はないようですから……。途中くじけそうになるときもありますが、好きなことだから頑張れるので、細く長く続けていけたらと思います。これは、日本語教師に限らないことですが、これから何かをスタートしようと検討している方は、それが本当に好きかどうかをもう一度考えてみてください。好きなことならあとはどうにかなると思います」と、専業主婦から再度社会復帰を考える人にアドバイスを送ってくれた。

企業が貯め込んだお金はどこに行く? 実は政府の借金に消えている?

 企業が貯め込んだお金はどこに行く? 実は政府の借金に消えている?

 

  日本企業の利益が大きく伸びる一方、賃金はなかなか上昇しません。企業の内部留保は増え続けており、しかも、その半分が現預金という状況です。このお金はどこに使われているのでしょうか。

 経常利益の推移(出典:財務省法人企業統計調査結果(平成26年10~12月期))

  財務省が3月2日に発表した法人企業統計によると、2014年10~12月期における日本企業の経常利益は前年比11.6%増の18兆651億円と、過去最高を記録しました。米国経済が好調で製造業の業績を後押ししたほか、円安と原油安の効果が働いているようです。一方で従業員の年収は過去20年間、横ばいかむしろ下がっています。このところ物価が上昇していますから、家計の実質収入は大幅なマイナスという世帯がほとんどでしょう。
 
  企業の利益拡大に伴って内部留保は過去最高水準となっています。内部留保は現金ではないので、内部留保の蓄積を問題視するのはおかしいという意見もよく聞かれます。確かに内部留保は会計上の利益の蓄積であり、この金額がすぐに現金として取り崩せるわけではありません。しかし、日本企業は現金の蓄積も莫大な金額になっているのが現実です。昨年末の内部留保は約330兆円なのですが、実にその半分が現預金となっています。つまり日本企業は160兆円もの現金を何もせず遊ばせているわけです。
 
  その理由は、日本国内に目立った設備投資先がないからです。主要な製造業の多くは、経済な好調な米国に工場を建設しており、米国市場にモノを売っています。またコスト競争が激しい分野はアジアに工場を立地するということになります。内需については基本的に人口が減少していますし、リスクを取って新しい産業を起こすという雰囲気ではありませんから、国内に資金需要はなかなか生まれてきません。
 
  ではこのお金はただ銀行口座に眠っているのかというとそうではありません。実は、このお金は日本政府の借金に充当されているのです。国債を中心とした政府債務は、基本的に国民の貯蓄によってまかなわれます。しかし、日本人の収入が減少していることから、家計の貯蓄率はとうとうマイナスに転換してしまいました。理論的には国債を買う余力がなくなっているはずですが、量的緩和策に伴う日銀による国債購入以外にも、まだまだ国債は市場で消化されています。それは、家計の貯蓄がなくなった分、企業の貯蓄が増加しており、これが金融機関を通じて国債の購入に回っていたわけです。
 
  企業は現金を蓄積するために存在しているわけではありませんから、この状況はあまり健全とはいえません。これを改善するには、日本経済全体の成長率見通しを高めることによって企業の設備投資を活発にし、それが家計収入の増加につながっていくという流れを構築しなければなりません。家計の収入が増えれば、貯蓄も増加しますから、自動的に国債の消化余力は増えてくるわけです。カギとなるのは、日本の成長力ということになるわけですが、今のところ産業構造を大きく変えようという動きは見られません。
 
 (The Capital Tribune Japan)

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アラブの春やイラク戦争が中東に与えた影響とは? 黒木英充、高橋和夫、萱野稔人らが議論(2)

 アラブの春やイラク戦争が中東に与えた影響とは? 黒木英充、高橋和夫、萱野稔人らが議論(2)

 

  THE PAGEが放送した生放送番組、THE PAGE 生トーク「中東とどう向き合うか~イスラム国から日本外交まで~」(http://thepage.jp/detail/20150302-00000006-wordleaf?)。出演は、黒木英充・東京外国語大学教授、鈴木恵美・早稲田大学イスラーム地域研究機構招聘研究員、高橋和夫・放送大学教授。司会・進行は、萱野稔人・津田塾大学教授、春香クリスティーンさん。
 
  以下、議論の第2部「中東の今を理解するためのポイントとは? アラブの春やイラク戦争まで」を議論した部分の書き起こしをお届けします(第1部はこちら(http://thepage.jp/detail/20150315-00000001-wordleafv?))。
 
 ※討論の動画は本ページ内の動画プレイヤーでご覧頂けます。

パラダイムの転換期にある中東

 [画像]黒木英充・東京外国語大学教授

 以下、書き起こし
 
 萱野稔人:はい。中東の今を理解するポイントは何か。今までのお話も踏まえまして、今の中東を理解するためには、何に注目したらいいのか、何がポイントになるのかっていうことをちょっとお話しいただければなと思うんですけども、まずじゃあ鈴木さん。
 
 鈴木恵美:ポイントもいくつもあってなかなか難しいんですけれども、1つは今現在の中東がパラダイムの転換期にあるということだと思うんですね。
 
 萱野:パラダイムの転換期。
 
 鈴木:はい。これまでの中東、そうですね。50年に一度、100年に一度、起こるか起こらないかぐらいの大きなこう、いろんな大転換期にあると思うんですね。
 
 萱野:そうですか。
 
 鈴木:ええ。例を挙げると本当にいくつもあるんですけれども、例えば、アメリカの対中東政策の基軸国、要の国だと言われてきたエジプトとサウジアラビアにしても、アメリカとの関係1つ取ってもこの数年でだいぶ変わったわけですね。
 
 萱野:そうですか。
 
 鈴木:そうですね。エジプトは非常に親米、今でも基本的には親米ですけれども、アメリカべったりの国だったわけですけれども、それがロシアに接近して。で、ロシアが最近ウクライナ情勢でちょっと歩が悪いということになると、去年12月ぐらいから急速に中国に接近していて、これまでの中東って言ったらサウジアラビアとエジプトががっちりアラブ諸国を束ねるっていうような形がちょっと崩れてきてると。アメリカに石油を安定的に供給するためのタッグっていうのがちょっと崩れてきていると。
 
 萱野:エジプトが例えば、ロシアや中国に接近する理由ってなんですか。
 
 鈴木:もうこれは、エジプトがこれまでアメリカからいろいろ援助してもらってたわけですけれども、2013年に軍事クーデターが起きて、で、軍事クーデターで成立した政権を、アメリカとしては大々的に支援することができないわけですから。
 
 萱野:一応そうですよね。軍事クーデターで成立したっていうことで。
 
 鈴木:そうですね。だからといってアメリカ政府はエジプトを切ったりしないわけですけども、関係はやはり、相対的には悪くなって、援助金もちょっと減ってるわけですよね。
 
 萱野:そうですか。サウジアラビアもアメリカべったりじゃなくなってるんですか、今。
 
 鈴木:そうですね。ちょっとシーア派とかそういうちょっと話が難しくなっちゃいますけども、1つにはよく言われてるのはシェール革命ですよね。アメリカでたくさんエネルギーが自分たちで調達できるようになって、もうサウジアラビア要らないよというような方向に向かってきてると。
 
 萱野:アメリカ自身もそういう方向に向かってる。
 
 鈴木:そうですね。こういった感じでだいぶこれまでの中東関係、アラブ諸国の域内のパワーバランス、あるいはアメリカとの関係、ロシアとの関係っていうのも、がらっと今変わりつつあるという、非常に転換期にあるということですね。なので、なかなか理解するポイントとしては難しいんですけれども、今はいろんなものががらがらと動いているときだっていうことを1つにはやっぱり知っておくべきだと思うんですね。
 
 萱野:そのパラダイムの転換、要するに大きな枠組みが変わるんだということだと思いますけど。
 
 鈴木:そうですね。
 
 萱野:今外交の話だったじゃないですか。内政って、国内的な状況でのパラダイムの転換っていうのはあるんですか。
 
 鈴木:そうですね。それは地域なり、1カ国、1カ国でだいぶ状況が違うので、それぞれ見ていかないといけないとは思うんですけれども。
 
 萱野:一言で言うと、でも、あの地域で起こってる国内的なパラダイムの転換があるとすればなんですか。
 
 鈴木:そうですね。初めのテーマともちょっと重なりますけれども、これまでの秩序が崩壊したわけですから、その秩序を再生しよう、復活させようという勢力が強いのがエジプトですけども、もうずっと混迷しているのがシリアですよね。アサド政権はこれまでの政権を維持しようとしてますから、そういう状態であるとか、もうリビアも完全に内戦状態ですから、もう崩壊しちゃってるわけで、そういった感じでいろんなこう、まあ、枠組みが崩れているっていうことですね。

世界と中東の相互作用が現在を形作る

 萱野:なるほど。今、パラダイムの転換、大転換だというお話ありましたけども、黒木さんは何が中東を理解するためのポイントだというふうにお考えですか。
 
 黒木英充:今、鈴木さんがお話になったように、その中東だけで話は収まんないですよね。アメリカが出てくる、ロシアが出てくる、中国が出てくるっていう感じでね。これはもう、なんて言うか、それらがみんな総合的にお互いの関係の中で作ってるものだというふうにまず考えるべきだと思うんですね。
 
 萱野:お互いの関係の中で作ってる。
 
 黒木:つまり、中東、中東って言ってもいろいろですけれども、そこと、それぞれの、もう世界中がそことの関係、していると。もちろん、濃い薄いはあるにしてもですね。もちろんアメリカっていうのはそこでは一番大きな関わり方だろうと思いますけども。ですので、その相互的な問題として、だから、アメリカも変わりつつあるわけですよね、そういう意味では。ロシアも変わりつつある。だから、まずそういうふうに考えるべきだっていうことが1つですね。それとあとやっぱり、いくつか大転換期にあるっていうのは私もまったく同じ意見なんですが、でも、変わらないことも、変わらないっていうか。
 
 萱野:変わらない部分もある。
 
 黒木:なんて言いましょう。長期的な、もっと長期的な要素っていうのもあるわけで、それは例えば、例えば今イスラムのいろんな過激思想とか、ジハード主義とか、いろんな考え方ありますけども、いわばそれ突き詰めていくと、例えばイスラムが始まってまだ間もないころの7世紀に、自分と意見の違う人たちは、もうこれはイスラム教徒としては認めないって言って、ほかの多くの人たちから離れていく人たちっていう、そういう宗派みたいなのも表れてくるんですね。で、もう正しい信仰者ではないと、彼らは。だから、そのためには戦って殺してもいいんだっていうような考え方ですね。ですから、そういうものがいわば今、それ、その後もいろんな形でその考え方は、例えば18世紀のサウジアラビアの今のサウジアラビアの元になったワッハーブ派っていうのが出てきたときなんかにも、そういう考え方がよみがえってきてるわけですね。ですから、今起こってる、これは時代錯誤的なアナクロの話ではなくて、非常に古い層がぽっと顔を出してくるということがあるわけですね。それが1つですね。
 
  それとあとは、今度はそのヨーロッパとの関係、欧米との関係で言いましても、例えばそれこそ今、イスラム国が十字軍ということを盛んに宣伝の材料として使ってますけれども、このイメージっていうのはやはりずっとあるわけですね。
 
 萱野:要するにイスラム教徒からすれば、キリスト教徒がわれわれを侵害してるんだと。もう侵略しようとしてるんだっていう。
 
 黒木:キリスト教徒っていうか、外のキリスト教徒ですね。自分たちにも、中東にもキリスト教徒はいっぱいいますからね。ですから、そうやって外から侵略してくるっていう、この感じですよね。
 
 萱野:それはやっぱり欧米だっていうことになるんですよね。
 
 黒木:最近の話ではなですね。で、それが、でも、よく考えてみると、今のシリアのアサド政権側の下で暮らしてる人たち。これもいろんな考えの人たちいますけれども、シリアの人口の中では大半を占めてるわけですけれども、そこにいる人たちからすると、いや、イスラム国こそまさに十字軍的に世界各地から集まって自分たちを攻撃してくるっていう、スンニ派の十字軍みたいな、そんな言葉さえ聞かれることもあるわけですが。ですから、まさに相互的な問題として。
 
 萱野:そこは一枚岩じゃないですよね。でも、やはり外から侵略されてて、自分たちがやられてるんだっていう意識はものすごくあるっていうことですね。
 
 黒木:ありますね。ただ、それもまた問題なんですけれども、中から外を引っ張り込むっていうこともあるわけです。隣のライバルをやっつけるために外の勢力を利用するっていうのは、この地域ではよくあることなんですよね。だから、常にサッカーをやってるように常に動いてるわけですよ。
 
 萱野:それはでも、本当にわれわれからすると分かりにくいというか、何が起こってるのかっていうのはよく分かりませんよね。
 
 黒木:サッカーをやるようなつもりになって。いくつかゴールがあって、なんかいろんなチームが入り乱れてて。
 
 萱野:チームも何チームもあって、途中でユニフォームを脱ぎ変えるような形で。
 
 黒木:入り乱れて、変えてると。そんな感じでやってる。
 
 萱野:そうすると、われわれからすると、あれ? って。この前まではこういう力関係だったのが、今度はまったく違う勢力図になってるとか。
 
 黒木:なってるわけですね。
 
 萱野:別のところで紛争始まっちゃったりとか、やっぱりどんどん起こるわけですね。
 
 黒木:そういうことですね。
 
 萱野:それだと本当にわれわれも分からないっていうことになるとと思いますけど。
 
 黒木:そうですね。だから、アメリカとロシアの力っていうのが、ここ20年ほどの間にぐーっと弱くなってきて、その分、そのさっきのサウジアラビアとか、今のトルコとか、あとは湾岸の、サウジアラビア以外の国々もいろんな形で動き出してるわけですよね。それぞれの自分の国の体制とか環境とかいろんな思惑があって、そういう多極的な、多極的な混乱ですね。
 
 萱野:アメリカの影響力が中東で落ちたっていうのはよく言われますけど、ロシアの影響力も下がってると考えたほうがいいんですか。
 
 黒木:ソ連のときから考えれば、やはり両極で押さえていたっていう、なんかその仕組みが崩れているっていうことは確かだろうと思います。これは高橋さんのほうがお詳しいと思いますけど。

アメリカと中東のかかわり

 萱野:いや、本当、すごいややこしい話がやっぱり出てきてしまうわけですけれども、ちょっと高橋さんから見ると、中東を理解するポイントはなんですか。一番のポイント。
 
 高橋和夫:私はもともとイランをやってたんで、イラン中心的な史観で見るんですけど、やっぱりイラン革命以降、中東の国際政治を規定してたのはイランとアメリカの綱引きだったんですよね。だから、エジプトもサウジもみんなアメリカに付いて、イランはほとんど独りぼっちだけど、シリアのアサド政権とか、ヒズボラとかが付いてる。それを、そういう構図があったのにアラブの春以降、アラブ陣営がばらばらっと崩れた。で、イランの陣営のほうもアサド政権ががたがたときた。で、しかも、今イランとアメリカが核問題で話し合いをして、仲良くなりつつあるというんで、これまでのイランとアメリカっていう分かりやすい構図がなんかぐちゃぐちゃとなってしまって、あれ? という感じですよね。
 
  ですから、今、イスラム国に対する攻勢、イスラム国はアメリカの敵でもあるし、イランの敵でもあるんですけど、アメリカとイランが同じ側に立ってイスラム国と戦ってるという。だから、これまでのセ・リーグとパ・リーグじゃなくて、セ・リーグとパ・リーグ、交流戦やっててという感じがちょっとして、これは見てる人は混乱しますよね。
 
 萱野:なるほど。スポーツの比喩が結構出てきますけども。そうか。イランとアメリカがずっと綱引きをしてたと。これ、どこまでさかのぼると考えたらいいですか。イラン・イラク戦争のころももうさかのぼれるっていうことですか。
 
 高橋:たぶんイラン革命ですよね。だから、それまではイランの政権はアメリカべったりでしたから。
 
 萱野:なるほど。79年。
 
 高橋:79年でぱっと。
 
 萱野:イラン革命によって。あそこで急に緊張が高くなって、そこからずっと綱引きが始まって、で、イラン・イラク戦争が起きる。で、ずっとアメリカはイランと戦うイラクを支援し続けるけども大きくなりすぎて、結局、湾岸戦争でたたいて。という形でちょうど冷戦も終わって、その後、イラク戦争があって。ずっと、でもそれは図式はやっぱり変わってなかったわけですよね。
 
 高橋:そうですね。
 
 萱野:イランとアメリカが綱引きをする。その中で力のバランスをなんとか保ちながら、中東を安定化させようという意図がお互い働いたと。でも、それが崩れてきてしまったということですよね。
 
 高橋:お互い話し合いましたからね。真ん中にいた国々は、なんなんだ、アメリカはとか思いますよね。サウジとかエジプトはね。
 
 萱野:そうですね。なるほど。それはなかなか明快な図式かな、という気はしますけども。
 
 高橋:うん。たいていの明快すぎる図式っていうのは間違って、詳細を排除してるんですけど、この図式もそうなんですけど、でも、詳細から入ると、本当に全体図が見えないから。うん。
 
 ———————-
 ※書き起こしは、次回「第3部」に続きます。

 ■プロフィール
 
 黒木英充(くろき ひでみつ)
 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授。専門は中東地域研究、東アラブ近代史。1990年代に調査のためシリアに長期滞在、2006年以降はベイルートに設置した同研究所海外研究拠点長として頻繁にレバノンに渡航。主な著書に『シリア・レバノンを知るための64章』(編著、明石書店)など。
 
 鈴木恵美(すずき えみ)
 早稲田大学イスラーム地域研究機構招聘研究員。専門は中東地域研究、近現代エジプト政治史。著書に『エジプト革命』中公新書、編著に『現代エジプトを知るための60章』、他、共著多数。
 
 高橋和夫(たかはし かずお)
 評論家/国際政治学者/放送大学教授(中東研究、国際政治)。大阪外国語大学ペルシャ語科卒。米コロンビア大学大学院国際関係論修士課程修了。クウェート大学客員研究員などを経て現職。著書に『アラブとイスラエル』(講談社)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会)、『アメリカとパレスチナ問題』(角川書店)など多数。
 
 萱野稔人(かやの としひと)
 1970年生まれ。哲学者。津田塾大学教授。パリ第十大学大学院哲学科博士課程修了。博士(哲学)。哲学に軸足を置きながら現代社会の問題を幅広く論じる。現在、朝日新聞社「未来への発想委員会」委員、朝日新聞書評委員、衆議院選挙制度に関する調査会委員などを務める。『国家とはなにか』(以文社)、『ナショナリズムは悪なのか』(NHK出版新書)他著書多数。
 
 春香クリスティーン
 1992年スイス連邦チューリッヒ市生まれ。父は日本人、母はスイス人のハーフ。日本語、英語、ドイツ語、フランス語を操る。2008年に単身来日し、タレント活動を開始。日本政治に強い関心をもち、週に数回、永田町で国会論戦を見学することも。趣味は国会議員の追っかけ、国会議員カルタ制作。テレビ番組のコメンテーターなどを務めるほか、新聞、雑誌への寄稿も多数。著書に、『永田町大好き! 春香クリスティーンのおもしろい政治ジャパン』(マガジンハウス)がある。

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